ある日のエコドライブ

senri_gusuku2014-07-19


【1.南九州の叫び】
「ちょっしもたぁ!」
 桜島サービスエリアを抜けて、加治木ジャンクション(以下、JCT)で宮崎行きの右へハンドルを切った俺は、N-ONEの車内で西郷どん風に*1叫んでしまった。

 鹿児島市から宮崎市へ高速道路で帰還するルートは2つある。
 一つは、九州自動車道を北上し、えびのJCT宮崎自動車道に分岐する道筋だ。霧島山系を北に半周して走行する動線は、距離が長くなり、飛ばす車も多いため燃費も悪くなるし、高速料金は高めにかかる。
 もう一つは、加治木JCTで隼人道路に経由し、東九州道自動車道を移動するルートがある。霧島山麓を南回りに通り抜け、都城盆地の末吉財部でいったん一般道に出て、都城ICで宮崎自動車道に合流して宮崎市を目指す。時間はかかるが、距離は短く無駄な速度は出さないため燃費はよいし高速料金も安めにあがる。

 7月から休日の高速料金は50%引きから30%引きに値上げされた。ぜひ後者のルートを使いたかったのだが、今までの習慣とナビの言葉に無意識に従い、都城行きではなく、宮崎行きをうっかり選んだ訳だ。
 頭をかいても始まらない。深呼吸をした俺はメーターパネルの右下に目をやった。
 行きは東九州道を使ったため、旅の前にリセットした燃費計はリッター22.2キロを示している。

 カタログ燃費23.2キロの車としてはなかなかの成績といえよう。思考を向上や維持から損切りにスイッチさせた俺は、目標値を20キロにまで絞り、覚悟を決めた。


【2.鹿児島空港までエコドライブ】
 速度を落とし、背後を走っていた同車種のN-ONE Premium(おそらくターボエンジンを搭載したTourerだろう)の白黒ツートンに先を譲ると、登坂車線へハンドルを切った。

 俺のN-ONE Tourer Lパッケージも同等のエンジンを搭載している。エンジンの馬力には疑問を抱いていないが、そのままの速度だと加治木JCTから鹿児島空港へ至る登り坂では、メーターパネルのLEDはエコドライブ表示のグリーンからホワイトへと色調を変えてしまう。
 今回の目的はエコドライブだ。
 飲めない酒を部下に飲ますアルハラ上司のような運転をするつもりは、ない。

 夕方に人口60万の鹿児島市を出る九州道上り車線は様々な車が通る。お隣中九州地方の熊本県民、県庁所在地を訪れる北薩の人、そして俺のような南九州一の都市を訪れる宮崎県民だ。ホームスピードという言葉があるように、普段ならば高速で道を譲ってもらうようなマーチやモコが走行車線を飛ばしていくのを尻目に、俺はアクセルをゆるめた。速度を80キロに落とし、パネルが白くなった時は後続車両がいない事を確認して、70キロにまで下げていった。
 同じ宮崎ナンバーのN-ONE Premiumのプレミアムディープロッソ・パールが追い抜いていく。上品な茶色の車内には2ー3人の子供が乗っていた。よその子たちだが、彼らの未来のためでもある。
 燃費計は見る度に小数点第一位刻みで下がっていたが、坂や山間の景色が開けたとき、登坂車線は終わりを告げた。
 リッター20キロ台。それ以上は燃費計は下がらなかった。
 あとは、比較的穏やかな道が宮崎市まで続いている。

【3.霧島と鰐塚】
 俺は息を継きながら、じんわりとアクセルを踏み込んだ。エンジンの回転数が2500になったのを見計らい、クルーズコントロールをセットする。
 あまり遅くなく、燃費にいい速度がこのくらいである事を、行きに分かったからだ。
 カーブでは周りに迷惑にならない範囲でカンナを削るようなコーナリングで走行距離を縮め、何もない直進路ではは凸凹した路面を避けていった。霧島の山中はアップダウンが続いている。燃費がじりじりと延びることに安堵したかと思いきや、下り坂なのにメーターパネルが白くなってダウンしたときは不思議に思ったものだ。
 状況が変わったのは、都城盆地を出てからだった。
 宮崎平野都城盆地の間には鰐塚山系という1000メートルくらい山がそびえている。都城と宮崎の移動もアップダウンするが、大淀川の沖積平野である海抜一桁メートルの宮崎平野にでる頃には、下り坂がメインになる。
 気付くと燃費計はするすると上昇し、高速道路をでて目的地に着いたときは、リッター21.4キロの燃費を叩き出していた。カタログ値の92.4%を達成した事になる。

 たぶん、高速を使ったドライブの自己記録を更新したはずだ。
 夏は空気が膨張して比重が軽くなるから理論上は燃費が良くなると由良拓也さんの言葉をふと思い出して、エンジンを切った。

【4.N-ONEを伝道せよ】
 目的地は会社の友人たちとの夕食会の集合場所だったので、みんなを乗せて移動したり、車庫入れを繰り返している内にはリッター20.7キロ(実測リッター19.69キロ)が最終的な燃費になった。

 友人たちにN-ONEをお披露目できたのは良かったのだが、助手席に座った後輩がなかなかの発言をしてくれた。
「狸さん、なんで軽にしたんですか? これってぶつかったら死にますよね?」
「ペーパードライバーだったし、維持費が安いからだよ。こう見えてもボンネットはデミオと同じくらいの長さがあったし、エアバッグはそこらの車よりも充実しているよ」
「そうですか、僕が関東に行ったとき買ったbBはナンバーが『8080』、狙っていないのに『ヤレヤレ』でびっくりしました」
「ほほう、ジョジョですな」
 多分、新車と今車を持っていることに対するやっかみだろう。まあ、我慢してやろう。
 ついで、後席に座したアルトエコを愛車にする同期の女性からまた一言。
「○○さん(先輩女性)がせめて普通車にすればモテるって言ってたのに・・・」
「魔法使いのキモメンで申し訳ございませんっ!!」
 さんざんな言われように、分かり合おうとする意識は急速に遠のいていった。

 軽だって国の安全基準をクリアしている。車同士の衝突には確かに弱いだろうが、考えようだ。自分のミスでガードレールや壁につっこむリスクに関しては普通車と遜色ない安全性を担保しているし、逆に自分が加害者になった時に相手の損害を小さくできる。
 保険料も軽の方が安いのは、軽ユーザーの方が事故が少ない証拠だ。
 だいたい、自動車のコーティング価格も軽とコンパクトは変わらない。
 軽を差別する層としてコンパクトカー乗りと、3ナンバー乗りの2通りがいるが、前者は目くそが鼻くそを笑っている可能性に気付いた方がいい。

 俺はクルーズコントロールとスーパーUVカットガラスで疲れさせず、ETC料金と燃費が良くて、行きたいときに鹿児島や都城に気軽に行かせてくれるN-ONEには、すごく感謝をしている。N-ONEは、自由の翼だ。
 車の楽しみ方は人それぞれだが、ごつい4駆や3ナンバーに乗りながら、ナビもつけず町乗りしかしない県民にはすこし疑問を感じている。

 キリンフリーやソフトドリンクで海産物をいただく食事会の後にもやもやした気分は何日も残ったが、人の考えや感情は変えられまい。
 しかし、味方を元気にして増やすことは割と簡単なはずだ。今はN-ONE、ひいては軽の良さを少しでもネットに流して同じ軽ユーザーを励ましたいと思うのだ。

 今回のエコドライブの目的は経費の節減ともう一つ目的があった。
 燃費投稿サイト『e燃費』に優れた成績を投稿して、N-ONEの評価を少しでも上げられたらと思ったのだ。
 さし当たって今回の燃費はリッター19.69キロでe燃費のノンターボを含むN-ONEユーザーの平均値リッター16.44キロを大きく超えた。また、e燃費の軽全体のランキングでは、モコアイドリングストップの実燃費を越えた9位に相当している。
 これからもいい数字を出したくなると言うものだ。
 とりあえず、多くの人にN-ONEの世界におじゃったもんせ*2と言えれば幸せである。

*1:私学校の生徒が決起して西南戦争が勃発したときの発言

*2:鹿児島弁、諸県弁でようこそいらっしゃいましたの意味