ビートルズ=/=リン・ミンメイ?
【1.ビートルズさんと巡りあい】
休日なので、NHKのBS番組を背景にHDDに録画した番組を視聴していると、年末年始のビートルズ特集を再放送していた。
今回の日記も長くなるので、BGMを用意しました。
まあ、ミンメイと同じくアニメの劇中歌というくくりと、動画ではないので読むのに邪魔になりますまい(^^ゞ
私自身はビートルズの世代でもないし、戦争や革命のようなダイナミックなテーマでもないため、近現代史好きでも、好みからは外れる。
だから興味もなく番組を停止させる合間に眺めていたのだが、よくよく見るとテーマが特殊だった。
登場人物が白人ばかりだったから気付かなかったのだが、なんと旧ソ連でのビートルズブームのムーブメントについて特集を組んでいたのだ!
【2.社会主義下のビートルズ】
開放的なフルシチョフの次に政権に就いたブレジネフの息苦しい体制下、若者達は世界的なムーブメントを巻き起こすビートルズへ惹かれていった。
これはソビエト当局にとっては面白かろうはずがない。
西側のビートルズを好ましからぬ文化として紹介するフィルムが番組で紹介されていた。
『彼らの初コンサートは海水パンツに、首に便座をかけた異様な風体だったそうです』
『ビートルズのコンサートへ行った者は精神を病み、異様な行動に出て、喧嘩をする』
『この女性を見てください。部屋にはビートルズの4人の写真が所狭しと貼られています』
私はビートルズの初コンサートについては知らないが、まあ今では一般的な音楽に熱狂する者の姿を異様なものとして公共の場で糾弾していたのだ。
恐ろしいのは、ただの公共広告だけではなく、これを実行性のある政策として行っていた事で、レコードを保持していた若者が大学から退学させられた事もあった。
とはいえ、ソ連人はこうした抑圧には馴れていた。
当局の眼をかいくぐり、闇市で海賊版レコードを手に入れては友人同士でテープに録音して融通しあい、静かにブームは広がっていった。
この番組で注目すべきは、この時若者だったウクライナ人がインタビューでこう答えていたことだ。
「社会主義ソビエトの崩壊の立役者はゴルバチョフではない。ビートルズだ」
と。
その通り、ソ連社会でのビートルズ浸透は凄まじかった。
若者達はこぞってビートルズの真似をした。
雑誌に載った僅かな投稿を頼りに街角にある公衆電話やプロパガンダ用スピーカーを分捕ってエレキギターを自作し、ソ連のマーケットにないビートルズファッションの服装を作り出した。
西側に10年遅れたブームだったが、ソ連当局は次第にビートルズ世代の若者を意識せざるを得なくなっていった。
やがて国営工場ではギターや、名義を伏せた物のビートルズのレコードの海賊版も生産されるようになっていった。
ビートルズに象徴される自由を求める若者達の気風がソ連国内で受け入れられていく中で登場したのが、ロック好きの書記長と言われたゴルバチョフだったのだ。
【3.マクロスとビートルズ】
この流れ何かに符合するな、と思っていたらリン・ミンメイの歌で戦いを終わらせたマクロスだった。 日本人が良く手にする海外SFはアメリカやイギリス、そしてカナダの作品だと思うが、冷戦下これらの作品が架空の二大陣営(人類VSエイリアン)を描いていた場合、人類サイドは資本主義陣営、エイリアンサイドは社会主義陣営をモデルに描かれる事が多い。
マクロスの制作に関わったスタジオぬえは海外SFにも造詣が深いメンバーが多いから、スタッフがゼントラーディへのミンメイの歌の効果を考える際に東欧でのビートルズが頭にあったのかもしれない。
【4.おしまいに】
もちろん、リン・ミンメイのアイドル設定に当たって参考にしたのは、当時現役のアイドルだった松田聖子や中森明菜という。だから単純に遠い東欧の社会現象をそのままパクったのだ、といえる物ではないし、ソ連の崩壊はマクロスの放映から10年近く後のことだ。
ただ、この奇妙な符号はどこかで記録しなければ、と思うのだ。
短期間で2回もマクロスに関する日記を書いてしまった。
劇的に好きな作品というわけではないのだが、やはり80年代アニメとロシアというのは同じくらい好きなテーマであります。
最後に、蛇足ながらも旧ソ連からは世界的に有名なオーケストラ指揮者のロストロポーヴィチが輩出されたり、バレエも盛んであり、マクロスで描かれたゼントラーディのように文化がないわけではないので、ご留意されたし。
最後に、同じようにアニメ劇中歌をひとつ。
エンディングテーマにどうぞ。