♪肩を落とした 鉄の背中が続く どこまでも どこまでも 続く♪

 第一印象はなんだ、この歌は! と驚いたものだった。
 何かというと、1983年にTVアニメが放送された『装甲騎兵ボトムズ』の現在のところ最新映像作品になる『ペールゼン・ファイルズ』のオープニングテーマ『鉄のララバイ』である。

 ボトムズというと硝煙とオイルの世界、つーのはお約束なのだけど、その一方で詩的・文学的な次回予告のナレーション、歌詞にニヒリズム漂う『炎のさだめ』『風が知っている』など、けしてそれだけに留まらないところが世界観に幅を持たせていた。
「さよならは 言ったはずだ 別れたはずだ」
「誰も知らない わけも知らない 風がきっと 運んでくれるはずさ」
 戦いのある世界からの解放を望んでいた主人公キリコアストラギウス銀河の巡礼を描いた作品の主題歌としてこれまた素晴らしくマッチした歌だったと思う。
 それに比べるとひたすら泥臭い戦場に前向きな姿勢を歌ったこの歌はちと違うのではないか。
 おまけに近年のガンダムみたいに有名アーティストを使っているし。

 他にもオールドファンの新作への違和感コメントなどを聞き、しばし視聴を見送っていた私だが、転機が訪れた。我らが受信料で運営される国営の衛星放送に映画版が放送されるというのだ。
 放送された作品は、そんな私の先入観を噴き飛ばすものだった。

 けして仲が良いとは言えないバーコフ分隊の個性的な面々がイカす。
 いきなりキリコを殺そうとする少年兵ザキ、デブで臆病なくせにエリート意識を持つコチャックとか、クセがありすぎる連中が集まった中で、マジで反目しあったり協力し合ったりして危機を乗り越えていくのがなんとも男くさくていいのです。

 彼らの属するギルガメス軍も戦時下の軍隊のクセに上は派閥のせいで一枚岩ではないし、下も下で規律に縛られきったわけではないバラバラさ加減。
 ああ、そうなんだよ、これだこれ!
 けして理想化されない軍隊や人間関係といったドライな部分と、燃えるメカアクション。
 このカオスさと格好良さこそボトムズ

 考えてみるだに、本編ではキリコよりも他の分隊員の描写の方がメインだし、TV本編は戦争が終わってからの物だ。
 ともするとこれはこれで良いのではないか。
 作詞は監督である高橋監督自らによる物で、要所要所でこの『鉄のララバイ』と『バイバイブラザー』が使われるのだけど、全く違和感がない。

 貼ったPVも本編の映像が巧みに挿入されているし、柳ジョージ氏が歌っている場所も鉄骨むき出しの工場のような場所で、実に本編にマッチしている。
 うんうんこれまたいい物見せてもらったぜ。
 OVA版も見て、この世界にどっぷりつかり直してみるか。

 なわけで、『鉄のララバイ』CDを買ってしまった。
 今度カラオケに行く時はフルで歌えるようになっておこうかな……。