世界の艦船 10年11月号 『進水直前! 注目の「19DD」』読了


 今月号の特集は、来る10月に進水を控えた海上自衛隊の新型DD護衛艦『19DD』の概要である。
 公式筋から入手した最新のCGや写真を多数使い、図版がひじょうに充実している。完成予想CGに関しては、今後より詳細な図面や写真が見られる事になるだろうけれど、ドックで建造中の写真は今しか見られない貴重なショットだ。
 また、陸上試験中の減揺装置やガスタービン主機など、普段は見られない写真が多数あり、これだけでも見る価値はある。
 さて記事内容は、19DDの概観、船体、ウェポンシステムなどに渡っており、過不足はない。
 今後BMDに使われるイージス艦への防空任務など、在来の汎用DDとは違った役割が明らかにされると共に、たかなみ型と類似した外観の船体構造や上部構造を持ちながらもどこが異なっているかを明確にしており、進化を感じさせてくれる内容になっている。
 記事の中で印象に残ったのは、以下の3点。
 船体の項目で風圧側面積に配慮して艦橋の長さをたかなみ型に比べて2メートル短縮したとの記載があった。排水量を増やさないと、計画当初や諸外国の最新艦のように艦中央部も覆ったステルス性の高いデザインにするのは難しそうな事情が伺えた。
 船体・ウェポンシステムの項目では、19DDがよりネットワーク化・IT化が進められている事が具体的に記載されている。
 最後に、機関の項目で、先年の燃料の高騰や電力を必要とする機器が増加した事を挙げ、諸外国の艦のように機関のハイブリッド化、電気推進システムの採用などが提案されている。

 苦しい台所事情の中で、より良い艦を作ろうとする自衛隊の苦心が伺える一冊であった。