10/10(日)平野綾の騒動をいかに見るか



【0.はじめに】
 平野綾の非処女疑惑についてニュースもホットさを失ったわけだけど、ちと書いてみる。
 あ、思いっきり自分のオピニオンに過ぎないので気分を害される方もいるかもしれないし、長文です。女性の方には特にお勧めしません。
 じゃあ何で公開するかと言うと、多分語りたがりの業という奴です。
 ではスタート。


【1.平野綾という声優】
 感覚としては何を今更、と思わざるを得ない部分とそれを認めてはいけないだろう、という所が半々にある。
 2006年冬、平野綾は髪を切って染め、それまでの清純そうな少女の外見から脱し、全く異なった方向性を打ち出した。
 音楽はロック。ステージの衣装や振り付けもセクシーさを増した。最早おたくにとってアイドルが処女性を持っていなくても構わないのではないかという評論もネットでは見られた。
 今回の番組では、別に性体験まで語ったわけではない。ただ、豊富な恋愛経験を語っただけだ。
 何となく、遠い存在になりつつある平野綾をファンがウスウス感じていて、そこでこの恋愛談義で騒いでいるのではないか、と思わなくもない。

 ただ、同時にルール違反じゃないか、と思わされた部分がある。何故、芸能人を報じるメディアでわざわざ自分の恋愛体験を暴露しなければならないのか、と。
 例えば、他のアイドル声優で言えば水樹奈々だ。彼女は自分自身の歌を作詞する場合がある。
 歌詞のモチーフとしては、天使とか悪魔とか或いはまんがやアニメの世界でも見られるようなファンタジーなテーマだったりする。が、一方で恋愛絡みの歌詞は実体験がなければ書けないのではないかと思われるくらい生々しい物を感じさせられる。
 こうしたレベルで処女・非処女判定をするのなら、水樹奈々は間違いなく後者のほうだろう。
 ただ、見せないんだよね、水樹奈々は。
 ラジオでは体育会系で、恋愛トークはほとんどなかったように思える。また、仕事熱心なところが伺えて恋愛する暇がないんじゃないか、と思わされる所がある。
 いやまあ、あれだけパワフルだし、魅力的だからそんな事はないとは思うのだけど。
 表に出していない。これが大切だ。


【2.萌え理論】
 ここでちとインターバルを置き、萌えとは何かという事について話したいと思う。
 ただ単に可愛いだけでは萌えにはならない。
 例えば、ミッキーマウスサザエさんのキャラクターは可愛いが、萌えとは言わない。
 性的な要素・恋愛的な要素が絡んで初めて、可愛いは萌えに収斂進化するのだ。
 恋愛的要素とは、言ってみれば「ぼくだけのもの」という感覚であるとは、ジュブナイルポルノ作家のわかつきひかるが語ったところである。
 CDやDVDなど大量のグッズが販売されるアイドルは、大量消費文化が背景にあるから厳密には「ぼくだけのもの」にはならない。
 しかし、ファン達「ぼくらのもの」になることは可能であり、そのためのマーケティングが求められる。
 平野綾が歌手活動を開始した当初の幼さが残る愛らしいな容姿も、長い黒髪も全ては3次元の恋愛体験に乏しいファン層には最適化されたものだったと思う。

 人間だから恋愛経験の一つや二つ、あってもいいだろう。
 処女であるか否かにこだわるのが馬鹿らしいという意見は、ジェンダーの立場から肯定せざるをえない。
 しかし――思うのだ。そんなに遠いところに行かなくてもいいじゃないか。
 雲の上の住人じゃなくて、おたくとは国境線で分かたれた世界の住人だと残酷な現実を表明しなくても良かったんじゃないか、と。


【3.事件の後先】
 さて、報道された番組の内容を読む限り、平野綾が現在進行中で特定の誰かと恋愛中であるとか、誰かと結婚したというわけではない。
 私のように、髪を切ってイメチェンした平野綾になんとなく近寄りがたいものを感じて離れたのでなければ、いずれ幻想を回復する者は出てくるし、歌唱力・演技力の実力は変わっていないのだ。
 だから、この騒動は一時的なものに終わるし、今後も平野綾は歌手・アイドル声優として生存は続けるだろう。

 まあ、かと言ってかつてのように熱狂的な眼差しで平野綾を見るファンが減る事は確実だ。
 アニメに限らず、趣味の世界は『変わらない事』が一つの価値として存在する。
 戦後65年が過ぎても、ゼロ戦戦艦大和は模型メーカーが製品を改良して発表し、細く長く商品としての命脈を保ち続ける。
 原作が終わったはずのドラゴンボールもまたアニメを再編集して放送がされて、コンビニにフィギュアやカードが並び続ける。
 ガンダムは30年たっても、初代ガンダムの新金型のキットが模型屋に出荷され、デザインが全く異なる最新のガンダムにも初代ガンダムをモチーフにしたガンダムが登場し続ける。
 アイドル声優だってそうでしょう。
 井上喜久子さんは結婚して子供がいても17歳ですと自己紹介し、ファンからおいおいと突っ込まれる。
 肝心なのは、ファンと寄り添う姿勢だ。


(文中敬称略)