私はまだあのヴェトナムに……ジャングルの泥沼の中にいるんだよ
【あらすじ】
高い理想を掲げる一方で、敵を倒すためには手段を選ばず、嫡男のアレックスの案も容赦なく切り捨てる。ヤマオカの二面性に疑問を抱く鷹志は、生い立ちを探るべく彼の姉エリザベスにインタビューをする。
ヤマオカは敬愛する兄ジョセフをヴェトナムで亡くしていた。国民の義務を果たしたいと言ったジョセフは何のために亡くなったのか? 家族の反対を押し切ったヤマオカは、ヴェトナムへ行き、瀕死の重傷を負いながらも生還した。
ヤマオカの困難から逃げない生き様に胸を打たれた鷹志は、取材メモを手に彼と会うが、甘ったれた願望だと一蹴され、ヴェトナムでの行為を聞かされるのだった。
一方、大統領選はヤマオカの出身地であるニューヨーク州の得票が焦点になっていた。
ヤマオカが支持を取り付けたニューヨーク市長B・Bことギルバート・ブラックバーンに対してノア陣営が切り崩しをかけたのだ。
B・Bはニューヨーク州にしか影響力がないが、支持層はほぼヤマオカに被る。立候補されれば、ヤマオカの地元での敗北は確実だ。
政権獲得の際のポストを用意するノア陣営に対し、態度を明らかにしないB・Bの真意を両陣営は測りかねる。
そんな時、白人警官による黒人青年への暴行事件が起きる。このままだと20年間人種問題に取り組んだB・Bが有利だ。B・Bがニュースを知る前に引退をするようにヤマオカは脅しをかけるのだが――。
【感想】
暗部を探るはずが、いつの間にかヤマオカに呑み込まれている。そんな取材メモへのヤマオカの反応はあるべき物ですが、同時に鷹志を焚き付けているとも取れます。
ヤマオカにとっても鷹志は特別だが、けして甘やかしていない。二人の会談のシーンは衝撃的ながらも印象に残り、何度も読み返しました。
ここから推測すると、鷹志の生い立ちは雑草としての強さを身に付けて欲しかったためヤマオカが敢えてそうした展開が予想されますが、アレックスはヤマオカの下で育っています。
ヤマオカの指摘通り、富子の意志を知らなければ、鷹志の生い立ちの秘密は見えないでしょう。
さて、ヤマオカ自身の口から彼の暗部が語られましたが、だからこそ終盤のB・Bへの攻撃が違和感なく、説得力を持って感じられます。
B・Bの狸ぶりも大した物ですが、一方のヤマオカもB・Bに対する手土産が何になるのか明らかにしていません。
次回、どう決着を付けるのか。