合衆国国民が「去れ」と命ずるまでは私はここを去らない……それがアルバート・ノアという生き方なんだ!


【あらすじ】
 マスコミ向けのマリアの会見が近付く中、鷹志は謎の襲撃者から彼女を救い出し、二人きりで話す機会を得る。
 命を懸けて愛した男の子供を、母親が捨てるはずがないという思いを鷹志はぶつけるが、マリアは自らの発言を否定しない。
 無力感に駆られる鷹志だが、ヤマオカへの反発心が彼を踏みとどまらせる。
 マスコミを前に会見するマリアに対し、鷹志はヤマオカと繋がった携帯電話を渡し、両者の直接対話を行わせる――。

 ヤマオカがスキャンダルをはねのけたことにより、ノア陣営は不利に立たされる。
 窮地に立たされたノア副大統領にビル・クライトン大統領は策を提示する。
 話題づくりのために、クライトンの妻エラリーを副大統領候補に指名せよというのだ。野心の強いエラリーを副大統領に据えれば、将来的に政権は乗っ取られてしまうだろう。
 ノアに誘いを辞退されるや、クライトンはヤマオカにエラリーの副大統領候補指名を打診し、了承を得る。
 エラリーと面談したパトリシアは、彼女の野心を感じ、ヤマオカに警告をするが彼は平然とノアへの勝利が近付いた事を宣言するのだった。
 一方、党内の支持を失いつつあるノアは敗色が強くなっていた――。


【感想】
 知らなくても面白いし、知っていれば多分もっと面白い。
 ノアやクライトン、そしてエラリーなど、実在の人物をモチーフにしたキャラクターが本作には多く登場しますが、エラリーのクライトン観はモチーフになった夫婦の関係を思うに大きく頷けるところがありました。
 そして、同じ党でありながら容赦のない争いを繰り広げるヤマオカとノアは、2年前のオバマとヒラリーの選挙戦を思い出させます。

 現実の接点はさておき、今巻で遂に鷹志が主人公らしいアクティブな働きを見せます。
 マリアに対して自らの来歴を告げる体当たりの説得を行い、報道会場でヤマオカとの直接対話をセッティングするなど、熱さを感じさせられました。
 一方で、この巻の後半はノアにスポットを当てて展開がなされています。苦境に立たされながらも信念を貫き通す姿は、ただの嫌みな策士ではない面が伺えて好感が持てます。
 最後に、ヤマオカはこの勝利のためにエラリーという爆弾を抱え込むことになりましたが、果たしてどう乗り切るつもりなのか。
 次の展開も楽しみです。