歴史観もまた現代史の資料である
朝鮮戦争功臣の銅像、「親日派の銅像は撤去すべき」=韓国市民団体 2011/07/22(金) 09:46:46 [サーチナ]
私自身は特に韓国に特別の親近感も敵愾心も抱いていないのだけど、興味深いニュースだなあ、と思う。
朝鮮戦争の英雄を顕彰する気持ちは、つまるところ愛国心や武勇に対する敬意という所だろう。
このニュースで報じられている金白一将軍の銅像の撤去を求める声もそれの裏返しという事だろう。
個人的には植民地支配という物は嫌な物で、例え国のインフラが整い、高い水準の教育を受けられたとしても、自分たちを差別し、名前や文化などのアイデンティティを根
こそぎ破壊されたという痛みは想像に絶するものがある。
だから気持ちも分からないではないが、同時になぜ今なのか、不思議にも思うのだ。
将軍を顕彰する動機となっている北朝鮮情勢は未だ不安定なままだ。
昨年の延坪(ヨンピョン)島事件や哨戒艦撃沈事件など、朝鮮半島をめぐる情勢は今金正日氏から、金正恩氏へ権力移譲をする過程において、韓国軍に死者を出している。
また、将軍が所属していた間島特設隊の討伐対象となっていた抗日ゲリラの中には、金日成氏も含まれているのだ。
このニュースで日記を書いている多くの人のように、だから韓国人は愚かだ、と言いたいわけではない。
ただ、植民地だった国で独立直後に台頭したり、実力を現せる人物の多くは宗主国で一定のポストに就いたり、学んだりしたものが大半だ。
インド独立の父であるガンディーもまた、若い日はイギリスに留学していたし、蒋介石も日本陸軍に所属していた時期がある。
彼らは、植民地支配を認めていたのではなく、自らの能力を磨き、組織のノウハウを学ぶために、母国に対して必ずしも正解ではない事をしていたのだ。
建国直後の大韓民国においても、おそらくは将軍以外にも、植民地支配のもと、大日本帝国に所属していた者も大勢いただろう。
だからこそ、今まで将軍の来歴はさして問題にされなかったのだと推測する。
そんな人物がこうして批判の矢面に立つとは、韓国の世代交代と民主化が進むと共に安定期に入ったという事だろう。
ただ、可能な事であれば、今という時代も乗り越え、将軍の存在を闇に葬らずにしっかりと評価して欲しいものだ。
これは日本人としてというよりも、歴史の観測者としての願いである。