いやいや、頭が痛くなりますわい

「憲法破棄」新党綱領に…石原知事 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) 「憲法破棄」新党綱領に…石原知事 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

【1.はじめに】
 日本国憲法押し付け憲法である、という政治的主張は理解できるし、それに対して考えが凝り固まっている人を論破して説得する事は困難な事はよく分かっている。
 私がそうした考えを持つ人の政治思考とは対極的な考えを持っているからだ。


【2.破棄でいいのか】
 ただ、改正ではなく、破棄というのはどうも穏やかではないし、唖然とさせられる。
 現行憲法の草案自体は確かに、GHQからもたらされたものだ。
 だが、日本人による和訳と改変があり現在の形にし、明治憲法を改正する形で発表したものだ。
 運用だってもう60年以上日本人の手によってやってきている。
 今更『破棄』という形を取るのもばかげている。
 少なくとも、戦後65年以上の歴史を自ら無価値だとか、日本が日本でなかったと言っているのは、自分自身の行為に何ら主体性と思慮がなかったとうそぶいているわけであって、よほど自虐的ではないか。
 『生まれ変わる』という過程を強調したいのだとしても、現行憲法明治憲法の改正である以上、日本国憲法を改正して新しい憲法を定めるなり、一部改正する方が彼らが目的を叶えるとしたらよほど現実的だ。

 第一、国民投票をしないというのがいけない。
 ただ日本人だという理由だけで、自分たちの方がより理想的な憲法を作れるというのは、傲慢な思い上がりというものだ。
 私自身は得体の知れない政治家連中が、私のコミットしえない方法で憲法を作り上げる事は、権力者による押し付け憲法でしかないと思う。
 まあ、それで俺たちの憲法を! と言って本当に革命が起きるとしたら、それはまたエキサイティングだ。


【3.破棄の先にあるもの】
 正当な手続きでの改正ではなく破棄をする心情の底には、アメリカへの敵愾心と反発が流されている。
 でも、そもそもソ連も崩壊して、斜陽とはいえアメリカが世界唯一の超大国として君臨している今、アメリカの影響力を無視し続けられる国があるのだろうか?
 アメリカの反発を買っているイラン? いやいや、イランだって兵器はパフラヴィー王朝時代に買ったアメリカ産の物だし、今は経済制裁で国内にも不満がたまっている。
 アサド大統領がいまだに君臨しているシリア?
 そりゃあ軍事的にはアメリカの侵攻を受けていないが、対外的には弁明に必死だ。
『国内で反対しているのは国民ではないです。アルカイダです』
 てな具合に発言していたら、本当にアルカイダがアサド大統領と戦うためにシリアに乗り込んでくるくらいだ。

 とりあえず、自主憲法を制定したとする。
 当然9条は改正され、自衛隊は国軍に昇格して自由自在に動かせるようになる。
 で、どうなるか。
 領土問題を抱え、国力を伸ばしている中国に単独で防衛を張るのは自殺行為なので、やっぱりアメリカは同盟国として必要だ。
 徴兵制を敷く韓国にだってアメリカ軍基地は存在する。
 自民党だってTPPへの参加は『時期尚早だ』というだけで、TPPそのものは否定していないではないか。
 結局は、アメリカと今までと同様かそれ以上の緊密な関係を結んで行くしかないわけだろう。自民党政権にしろ、石原新党政権にしろ。
 国際社会では、孤立をせずに他国との連携をとっている方が、経済的にも、軍事的にも有利であることは自明の理だ。
 それが台湾やインドやオーストラリアであり、彼らとともに中国への包囲網を作ろうではないかと大望を抱くのはいい。
 が、忘れてはいけないのは、これらの国だって孤立して成り立っているわけではないのだ。
 結局、石原氏のやりたい事って日本を戦争のできる国にする事であり、寿命が近付いている自分に焦りを感じて『破棄』と言っているのだろう。


【4.まずは国民の憲法を】
 自民党民主党も、基本的には改憲をしたい政党だ。

 湾岸戦争で多額の援助をしながら評価されなかったこと、北朝鮮問題、9・11、そして尖閣諸島問題と、日本を取り巻く国際情勢は冷戦期のようなミサイルが飛んできて全てがなくなる

オール・オア・ナッシングからより現実的な小競り合いへとシフトしつつある。
 私のような護憲派としてはあまり嬉しい話ではないが、国民投票で九条の改正をしうる時が確実に近付いているのは間違いない。
 その時まできちんと議論をし尽くして、今度こそ明治政府でもGHQでもない日本国民が定めた憲法を作ろうじゃないか。
 少なくとも、『石原慎太郎憲法』を制定して、それを長年奉る事だけはしてはならないと思う次第である。