鹿児島の夏、講座の夏

今週のお題「2012年、夏の思い出」

【1.故郷を遠く離れて】
 失った物をこの夏に取り戻した。

 2010年の冬、東京を離れて宮崎へ行く時に何が名残惜しかったかって、そりゃあイロイロある。
 家族、友人、住み慣れた町の風景、秋葉原、そして10分と待たずに確実に電車が来る中央線、そして、カルチャーセンターにある様々な講座がそれに当たる。

 まあ、挙げていった物の内、前半だと生まれ故郷にしかないものだけど、後半になれば多少の都会ならばあるような気もする。
 じじつ、日豊本線は1時間に1本しか電車がこないけれど、鹿児島本線では1時間に2本来るし、博多の地下鉄ならばダイヤは東京並に組まれている。


【2.カルチャーセンター】
 だが、カルチャーセンターとなると別なのだ。
 歴史系・小説創作系で東京近郊でも充実していたのは朝日カルチャーセンターの新宿・立川校で、同じ朝日系列でも横浜とか別キャンパスになると途端に失速したように内容が定年退職後の楽しみレベルに変化していくし、それはたとえば福岡でも変わらないんですな。
 ともすると、宮崎県の講座も推して知るべし。
 ま、大学の公開講座もあるにはあるんですが、私の興味のある分野ではなく、これは仕方がないものかとがっかりしていたんですな。
 ところが、意外なところに救いの手があった。


【3.鹿児島の充実】
 きっかけは、鹿児島への一泊二日の旅行だった。鹿児島城(鶴丸城)と尚古集成館を訪れた私はそこで様々な歴史の講座が行われている事を知った。
 それも初心者向けの入門レベルではなく、薩摩藩や島津家に関するかなり本格的な物だ。
 思い切り通いまくったし、ついでに鹿児島の史跡を練り歩いた。南九州の太陽は強く、肌はすっかり黒くなった。これだけ夏に日焼けしたのは学生時代以来の事だ。
 7月21日は、慶応義塾大学の名誉教授から朝鮮通信使と対比して琉球使節をどう捉えるのか、様々な示唆を講座から与えられた。
 7月28日には、島津氏お膝元の尚古集成館で島津氏の琉球支配を裏付けた文書が実は偽書だったことを知らされ、なかなかない学問的な刺激を受けた。
 8月11日には、尚古集成館の副館長から、古写真や古地図をもとに、かつての鹿児島の姿を一気にスライドで見せていただき、素晴らしい体験ができた。
 まだまだ講座はあるし、これからも受け続ける予定だが――、夏の講座としてはこんな感じだ。素晴らしい出会いに感謝しているし、今までの自分の関心と、これからの自分の関心を結びつける上でもすごくいい機会だと思っている。

 南九州でも、今週はもう秋空になり、涼しい風が吹き抜けているが、鹿児島に行けばまだまだ熱い思いを味わえそうである。