ウヰスキーは無邪気な時間の終わりを告げるのか?
今週のお題「秋の新○○」
【1.朝ドラとわたくし】
実は朝ドラが結構苦手なわたくし。
いや、さすが我々から搾取……もとい納められる受信料で運営され、全国で放送するNHKだけあってヒロインは清楚で可愛いイメージの方が多い。
しかし目の保養になるかと思いきや、結構無鉄砲な行動に皆様出られるので、見ていてハラハラさせられる。こうなると、朝の忙しい時間には敬遠の対象になるのだった。
そんなわけで、まともに通しで観たのは、水木しげるという強烈なキャラクターが出てくるゲゲゲの女房だけが唯一だった。
【2.ウヰスキーは無邪気な時間の終わりを告げるのか?】
珍しく秋の新朝ドラ『マッサン』を観る気になったのは、異例とも言える白人ヒロイン採用という事から、新しい風を感じたからだ。
見てびっくり。
中島みゆきの力強いボーカル。
松岡洋子のおっとりとしながら包み込むようなナレーション。
パッケージングは上質だ。
冒頭は年老いたマッサンこと(と言ってもそう呼ばれるのは2週目からだが)亀山政春がヒロインを失った後夢を叶えたシーンで始まる。ヒロインが届かなくなってしまった存在として、理想化されて描かれているシーンがぐっとくる。
この直後に若き日のマッサンとエリーの駆け落ちのシーンから物語は始まる。
観終わった第一話を振り返ると、無邪気な青春時代に夢に生き、夢と引き換えに無邪気な時間の幕引きが――。
そんな浦島太郎のような物語を予見させられる。
文句はない第一話で、録画した番組を三回くらい観てしまったことを告白しておこう。
【3.恵まれたモラトリアムのような、バイキング料理のような】
第一週は、次男なのに造り酒屋の跡取りとして考えられていたマッサンが連れ帰った外国人の嫁エリーに対する実家の反発、第二週はマッサンの勤める住吉酒造の社長がやはり彼を跡取りに考えていて一家挙げてエリーとの結婚への反対と茨の道のような展開。
ただ、この物語の面白いところは、周りが本当に敵ではなくマッサンを思いやった結果波乱が待ち受けているというところだ。
就職活動の大変さや、非正規雇用の拡大とかで心をすり減らしながら我々が働いているのに対し、マッサンは沢山ある魅力的な選択肢の中から、エリーとウヰスキー作りという夢に繋がる道を選び取っていく。
なんだか恵まれたモラトリアムのような、バイキングの中から一番魅力的な料理を選んでお腹を一杯にしていくような贅沢な物語だ。
逆に現実離れしていたり、夢のような世界だけに仕事から帰ってきて録画した番組を観るのは良い切り替えになっている。
【4.エリーは美少女のお約束を踏む】
常に天秤にかけられ、最近は仕事で忙しいマッサンに構ってもらえないエリーとしては堪った物ではないが、しかしこの物語どこかおたく向けな気がする。
第一話のマッサンがエリーを懐かしむ姿はファイブスター物語の一巻でアマテラスがいなくなったラキシスに思いを馳せるシーンをほうふつとさせられたぞ。
個人的な趣味はさておき、先に述べた手が届かない理想化されたヒロインというのは、結構非モテ向け作品と相性がいいと思うのだ。美少女PCゲームのWith youや君のぞ、SchoolDaysもダブルヒロインの片方はスタートがそんなポジションだった――サンプルとして挙げた作品が古いのは、書いているわたくしおっさんだから許して欲しい――。
また、第一週も第二週も、浮世離れした美少女が作品世界からいなくならないように留めようとする展開はアニメやライトノベルでもお約束だ。
妙な一致だけどドンピシャだ。
しばらく毎日の楽しみが一つ増えそうだ。え? ウヰスキーは呑まないのかって? カクテルやリキュール以外にも楽しめるようになったけど、最近は地元応援で霧島酒造の焼酎や、延岡の日本酒が美味いんだよねえ。県内の消費が増えれば最低時給が引き上げられて俺の給料も上がるのではないかという姑息な考えもあるけど。
まあ、気が向いたら呑んでみよう。その時は嫁もなく夢もかなわないサイクルを辞められない3Y生活が変わるかもしれないし。