N-BOX(’13年次改良モデル)乗ってみた!


【1.はじめに】
 実はN-ONEを買う前の選択肢で、N-BOXが第一の候補だったわたくし。
 当時実家の車がフィット1からフィット2ハイブリッドになり、増えた車幅と、バックミラーやAピラーの配置による視界の悪化から運転し辛さを覚えていた身としては、N-BOXはすべてをクリアした魔法のスモールカーだった。また、車庫入れが不安な私には嬉しい装備がデフォルトでついていた。リアウィンドウ直上にミラーがあり、左のサイドミラー正面に付いた補助ミラーから、車体の左斜め前が確認できるのだ。車体で死角になり、心配な部分をカバーできるこの気配りは、タントにも、この時期には発売されていなかったスペーシアにも存在はしていない。
 ただ、N-ONEと乗り比べをして軽自動車規格自体が極めて運転しやすい事に気付かされ、N-BOX固執する理由が一つなくなった。
 お値段や、最上級のプレミアムツアラーでなくてもターボエンジンとスーパーUVカットガラスもサイドカーテンエアバッグもあり、比較的燃費もいいとなると自然と選択肢はN-ONEに傾いていった。
 今でもN-ONEが最適解だったと思うし、常々買ってよかったと思いながら毎日その姿を眺めているわけだけど、1年点検の日が訪れたので、1日だけ離れて、代車に乗る事になった。
 5ナンバーの代車というと、FIT3か、軽自動車規格で言うと最新のN-WGNか。
 ワクワクしながら宮崎市にある馴染みのディーラーさんへ行ってみると、そこには真っ黒なN-BOXが待っているではないか。
 担当営業氏によると、まだ下ろして1か月くらいしか経っていない新車だという。
 この日は都城島津邸が主催する都城文化ホールでのシンポジウムもあるので、早速代車のお手並み拝見とばかりに高速へ乗り出した。


【2.N-BOX最新モデル!】
 スケジュールがカツカツだったこともあり、ディーラーさんから預かるとともにさっさと走り出したのだけど、少しして気付いた。
 これ、ノンターボだ。
 N-ONEツアラーは、ゆっくりアクセルを踏んでいくと時速18キロまではメーターパネルのエコランプが白からグリーンへ変わり、時速40キロや60キロまでスッと加速できる。しかし、N/AのN-BOXは時速20キロまで5秒かけてそれからアクセルを踏み込んでいってもメーターパネルはエコではない白のまま。
 ただ、町乗りに不足は感じない。エンジンの回転数は2000を越えていたが、ラジオを流しているせいか音は気にならない。
 そういえば、2013年の夏に試乗した時はパワー不足で、エンジン音が大きかった。実家のフィットハイブリッドと同じ感覚で減速しながら角を曲がったら、途中で立ち往生しそうになって、アクセルの踏み込みを増やしたんだった。今のN-BOXにそれはない。あの時はディーラーの担当さんと母とで3人で乗っていたからか。
 しかしクリープのスピードが愛車のN-ONEより少し速ように感じるにつけ、疑問は確信に変わった。
 過給されていないクリープならば、車重も空気抵抗もN-BOXは不利なはずだ。
 このN-BOXには、'13年の12月に行われた年次改良によって、N-WGNのエンジンテクノロジーと軽量化された車台が使われているのだろう。少し悔しいが、N-ONEにその改正がされたのは、'14年の5月になる。
 これは面白いかもしれない。ウィンカーを左へ点滅させると、私は国道10号線から宮崎自動車道へハンドルを切った。


【3.贅沢な風景】
 インターチェンジの入り口はカーブした緩い上り坂だ。ハンドルはカーブでのフィーリングで特に違和感もなく、スムーズなコーナリングをこなしていく。シートも身体を適度にホールドしてくれた。内装が黒いブラックパッケージだと、色だけじゃなくてシートも特別なのかと思ったが、後で比較したら、色が違うだけでノーマルのN-ONEと同じベンチシートだった。おそらく、N/Aエンジンだからあまりスピードを出していないせいだろう。
 ETCのないいつもとは違う料金所を通過したら、素晴らしく景色が開けた。この車でのドライブ、楽しい。
 何しろ背の高さが売りの車である。普通に着座しているだけで視点は高く遠くまで見通せるし、サイドのウィンドウはフロントガラスよりも上端が高い。177センチの私が着座して、目線よりも上にドアバイザーがあるのだ。バックミラーも、左斜め前の視界を遮らないし、位置次第では背後の遠くまで見通せるではないか。
 宮崎市の本格的な紅葉はまだだが、山の風景をいつもより楽しめ、宮崎自動車道をすごく新鮮に感じられた。
 肝心の動力性能は、ノンターボだけあって少し物足りない。定速の時速80キロを出すのに、エンジンは3000回転以上を絞り出している。N-ONEツアラーならおよそ1500〜2000回転くらいで達成できる速度だ。空いているからいいけれど、混んでいる時や周りがそれ以上のペースだと少し心配になる。それに、N-ONEツアラーだと3000回転を越えた速度だったら燃費は伸びないのだ。
 これは少し困るのではないか。
 道路が上り坂だとすぐに回転数は上りスピードが落ちる。下り坂だと回転数は下がり、スピードが出る。実に地形に素直な車だ。
 N-BOX鰐塚山地を抜け、右前方に赤いトンガリ頭の高千穂峰がそびえる都城盆地に突入した。
 ICで再び国道10号線に合流して、都城文化ホールに向かった。お蔭でシンポジウムには開演前の余裕を持った到着ができた。
 シンポジウムの内容については、別の機会に譲ろうと思う。


【4.内装もなかなか】
 シンポジウムも終えたので、スケジュールに余裕を得た私は、駐車場で改めてN-BOXを観察する事が出来た。
 後部座席を倒せば自転車が入るという売り文句は本当のようで、N-ONEより荷台の床は低く、前席までのスペースは余裕があった。
 N-ONEと車台は一緒なのだけど、真横から見たCピラーは直角に近いので、底面積がそのまま収納スペースになった強みだろう。
 ただ、後部座席の後ろのトランクスペースは本当に狭い。前席とのスペースが広いのはゆったりしていていいけれど、4人乗せた時の収納を考えると、床に荷物を置くことになりそうではある。また、追突事故に不安を覚える方もいるだろうから、後部座席を前にスライドできるようにした方が良いのではないか。
 この辺りは後発のN-WGNで実現しているけれど、N-BOXの年次改良で実現できるといいと思う。
 ただ、このゆとりは後席に座ってとても気持ちいい。長距離ドライブしている時、コンビニやほっともっとで弁当を買って車内で食べる時がある。私はそんな時、気分を変えるために後部座席で食べる事にしている。目の前にハンドルがないので、運転と意識を切り離せるからだ。N-BOXならより快適な食事休憩をとれそうだ。

 あと、ルームランプ。N-ONEは前後のルームランプがシングルだけど、N-BOXは前後共に左右に並んだルームランプを採用して多少豪華な印象がある。ファミリーカーとしてより車格の大きな車からダウンサイズした層向けとしての配慮なのだろう。
 ひとしきり触って満足した私は、宮崎市へとハンドルを向けた。


【5.再会、N-ONE】
 N-ONEより大きなサイドミラーとバックミラーに映る夕焼けを楽しみながら鰐塚山地を越えて再びディーラーさんにたどり着いた。
 車庫入れのしやすさを再び感じながら、一日限りのN-BOXとはお別れし、点検の結果を伺う。
 特に異常はないようで、ワッシャーとドレンプラグ、オイルとオイルエレメントの交換、そしてタイヤローテーションを行っていただいたのみ。これでまた半年間安心して走れそうだ。
 担当営業さんのリップサービスかもしれないけれど、綺麗に乗っていると言われた時は嬉しい物である。
 新型車『グレイス』のチラシも貰って、N-ONEと再会する。
 何故か久しぶりに感じられるシートに身を沈める。ドアを閉めると、N-BOXよりも格段にいい音だと気付かされた。
 シフトレバー脇のくぼみにスマホを入れられるのも何だか落ち着く。
 視界は少し狭くなったが、前方に張り出したボンネットに浮かび上がるライトのふくらみが、N-ONEに乗っている事を意識させられる。このボンネットが運転席から見えるところがN-BOXにない特徴で、お蔭で車間距離や路側帯との距離感が掴みやすいのは大きな長所だと再認識させられた。タヌキともカエルとも例えられるN-ONEのマスクを形作るこのふくらみを見ながら運転すると、一体化したような意識が強くなるのだ。
 7時間ぶりに乗る相棒は相変わらずの動力性能で、三連休最後の夜なのにどこか遠くにまた行きたくなるのを我慢するのが少し大変だった。
 まあ、鹿児島でも都城でも企画展で取れていないメモは沢山ある。
 また来週、頼む。そう思いながら私はいつもの駐車場を後にしたのだった。