2ちゃん家庭板の住人は花咲か爺さんを語りつぐ


【1.みやざき歴史文化館!】
 今日は宮崎市の市街地北部にあるみやざき歴史文化館へ行って企画展の『宮崎の武士たち』を観て展示をメモしたぞ。
 現在の宮崎市域は江戸時代は佐土原藩飫肥藩鹿児島藩と3つの藩が国境を重ね、しかも日向の北端を支配していた延岡藩の飛び地もあったからさあ大変。
 まあ、江戸時代には宮崎市なんて概念はなかったけど、展示は佐土原藩飫肥藩、そして鹿児島藩の外城である高岡の武士のそれぞれの日用品や武具などを展示し、華やかな展示になっていた。
 身分制度に祈り、ニュースや貴人への関心、武具や楽器に調度品から見える日常の生活、そして教育制度や各藩のお家騒動など充実しておりました。
 個人的には、飛び地だった延岡藩の武士がどんな制度を敷いていたのかとか、鹿児島藩の去川の関所以外に各藩の国境警備体制とかより知りたい事もあったのだけど、ここら辺は気になったら自分で調べろとか言われそうではある。まあ、そうして組み上げた物がちゃんとしていれば、大学生や研究者の皆さんは評価されるから頑張ってくださいと、週末歴史家に過ぎない会社員のわたくしは思うのでありました。腐っているなあ。


【2.にほん昔ばなしと2ちゃん家庭板の共通項】
 さて、そんなみやざき歴史文化館は、蓮ヶ池歴史公園と言われる遺跡の中に建てられており、子供の遊び場も充実している。
 市としては子供向けの施設として意識しているのか、懐かしのまんがにほん昔ばなしのDVDがエンドレスで上映されており、和やかな気持ちにさせられる。
 にほん昔ばなしは別に史実に基づいているわけではないのだけど、そこはそれ。
 そもそも『歴史文化館』という『歴史博物館』ではないネーミングにしたのは、宮崎市が施設を作った時は歴史の古い清武町佐土原町も合併していなかったからだ。飫肥藩の史料は日南市、鹿児島藩の史料は鹿児島県が管理しており、宮崎市の歴史史料の持ち合わせは極めて少ない。そこで日本神話を展示の主体にしようとした苦肉の策から『歴史文化館』が生まれたのである。
 だからこそ昔ばなしは、この館の設立当初の伝承というモチーフとしては間違いのないチョイスだ。

 『花咲か爺さん』のお話を聞きながらノスタルジックな気分に浸る。クリップボードに固定したルーズリーフにキャプションを書き写していくのは学生時代、それも一番古い小学生の頃から変わらない行為だ――。が、ふと懐かしさ以上の既視感を覚えた。犬のシロが小判を探し当てたらシロを貸せと言ってきたり、シロの墓に植えた木から作った臼が小判を出すと知ったらまた臼を貸せと言ってくるいじわるじいさんとばあさんの下りだ。
「これってクレクレとかキチママじゃん!」
 と。
 イキナリの特殊用語で申し訳ないが、2ちゃんの家庭板の用語で、前者は他人が自分にないものを持っていると羨ましがってとにかくクレと言ってくる方、後者はまあ何にでもイチャモンつけるママさんを指している。
 現代って怖いなあとか、最近は常識がない人が多いなあとか思わされるエピソードが家庭板には溢れかえっている。
 物語が語り継がれたという事は、共感を呼んできたという事である。
 日本人が清廉だったはずの時代ですら、社会にクレクレとキチママが発生する事は避けられない物なんだよなあとしみじみと思わされた。
 家庭板で釣りとか創作と思われるエピソードもあるけれど、図らずしもその作者はまた昔話の派生を紡いでいるわけだ。


【3.変わりゆくもの、変わらぬもの】
 昔話は古びた衣をまとっているけれど、その中身はいつの時代にも通じる普遍性を持っているという事だ。
 自然災害や妖怪は避けられぬ困難や試練そのものだし、無茶ぶりをする長者や殿様は顧客や上司に置き換えられよう。
 こうした物語を通じて、大人たちは生きていく上での試練や知恵を子供たちに語り継いでいったのだなとなんとなく実感させられた。
 いい加減、自分の子供に昔話の絵本でも語り聞かせても不思議でない年齢になりながら2ちゃんのまとめサイトと博物館を楽しんでいるけれど、いい勉強になるなあ。