【快報】キモメン、若年リア充に圧勝する

 日も暮れた地元の駅前で、家路についていた。
 駅前の人通りは、私が東京を離れた4-5年前よりも増えており、東京の繁栄ぶりを肌で感じられた。
 たまに全身黒づくめでマスクの方がいてぎょっとするが、それは私も似たようなものだ。
 頭にはローソンで買った黒いニット帽、身体は10年物のダークグリーンのダウンジャケット(それでも1か月前にはクリーニングに出している)、セブンイレブン製のライダー用の風を通さない黒い手袋、ボトムスはジーンズメイトのライダー用の黒いズボンと全身真っ黒な上に、防寒性を重視するあまり自転車オンリーのくせにバイク乗りのような恰好でノソノソしているんだから怪しさ満点である。
 南九州の温暖な環境に慣れ親しんだ身としては南関東の寒さは堪える。産地偽装の南九州人だが、人は易きに流れるもの。こらまた仕方のない事だ。

 家路を急ぐサラリーマンの方々をひょいひょい躱しながら歩いていると、一組のカップルが目についた。制服姿の男女だが、軽いトラブルを抱えているらしい。
 女子の方が自転車を引き出そうとしたら、隣の自転車のスタンドを誤って起こしてしまったようだ。男子の方は何もできずに立ち尽くしている。
 私は彼女に一声かけて自転車の荷台を取ると、素早くスタンドを上げるとロックをかけた。
 ひとまずうら若き乙女を器物損壊の罪から救えたのは、一日一善にカウントしてもいい行為だろう。
 結果だけでも満足なのだが、二人からありがとうございますと言われたのは嬉しかった。

 彼女のいない時期が長い人生は、例えば中高生で恋人を作っている人間よりも私が決定的に劣るのではないかと疑念が付きまとう。
 それはまあ一面の真実ではあるのだが、少なくともこの瞬間、私の行動はリア充男子よりはるかにイケメンだったと思う。地がキモメンだろうと後天的な学習と行動でなんとかなるものだ。
『兄さんのことを責められねぇなぁ……。リア充だけは、許せねえ!』(三木眞一郎の声で)
 という心理があった事は否定しないけど。
『そういうことができるのも、また人間なんだよ』(また三木眞一郎の声で)
 今年もリア充社会を狙い撃つぜ!