都城でエロマンガ先生になる
6月に梅雨入りしてから、宮崎は毎日のように雨が降っていた。
久しぶりに晴れ間がのぞいたこの週末、私は都城島津邸の常設展を見学し、帰りに国道10号線沿いにあるチェーンの書店に立ち寄った。
みやざき文庫のコーナーで地方史や民俗学の本をしばし楽しみ、店内を一巡すると、成年コミックのコーナーで私は足を止めた。
新刊があるじゃないか!
食指をそそられる本は何冊もあった。スマホのメモ帳機能にタイトルをリストアップすると、13冊あった。
ここはセルフ作戦会議だ!
一旦マイトライドロンに戻ると、雨が降ってきた。
南九州の大きな雨粒は、のぼせた頭を冷やせ考え直せとバラバラとルーフを叩く。
通り雨がやむまで沈思黙考をした私は、5冊に絞り込んで書店に舞い戻った。
入り口のドアを推した時、二人の少女があとにいた。後ろ手にドアを開けておいてありがとうと言われる善行を積んで、目的のコーナーへ。
迷わず5冊。指折り数えて数の一致を確認。
レジに向かうと、店員は花澤香菜みたいな細い色白美人ではないか。
しかし幸運なことに、私の思春期は終わっていた。
迷わずバーコード面を上向きにしてカウンターへ5冊の本を積み上げた。
「お買い上げありがとうございます!」
言われた。清々しい表情で。
その笑顔が、銭の種へ向ける営業スマイルか、エロマンガの在庫管理から解放される喜びからか、私は分からなかった。
今からして思えば、成年コミックコーナーでほぼ全巻表紙を見ていた不審人物が万引き候補生ではなく、上客だった事への安堵かもしれない。
満点になったポイントカードと、重いビニール袋を助手席に私はトライドロンのイグニッションボタンを押したのであった。
霧島酒造の最寄りの書店だけあってなぜか焼酎の紙パックが入り口のコーナーに詰まれ、酒臭い書店での出来事じゃった。
翌日会社の先輩に話したら、
「その人会社に転職して来なければいいですね。あ、エロマンガ先生! て呼ばれますよ」
と言われたけど、まあ来んじゃろう。
ちなみに博物館で日本文化に触れた後だけあって、5冊の表紙のうち、2冊はヒロインが和服だった事を補足しておこう。
向学心も欲も満たせる、パーフェクトサタデーだったぜ。