4/25(日)扇橋閘門見学

senri_gusuku2010-05-08

【イントロダクション】
 仕事での移動で何度か使った都営新宿線に揺られ、ふらふらと日帰り旅行に出ました。
 行き先は、扇橋閘門。
 日本で数少ない現役で稼働する閘門が都内にあると知ったので、見学へ行ったのです。


【閘門とは何ぞや】
 いきなり初めてしまいましたが、閘門とは、高低差のある運河・河川などを水路で結んだとき、船舶の移動をスムーズに行うために設けられる構造物の事を言います。
 外観は、二つの水門を船舶のサイズ分の間隔を開けて設置してあるというシンプルなものです。
 水上交通があまり発達しなかった日本ではあまり馴染みのない施設ですが、軍艦ファンには、アメリカ海軍がアイオワ型戦艦の幅を決定する時にパナマ運河の閘門を通過できるぎりぎりの幅で建造したエピソードなど、馴染みのある施設です。


小名木川の来歴】
 さて、今回撮影をした扇橋閘門は、荒川と隅田川の間にある江東三角地帯と呼ばれる陸地を東西に横切る小名木(おなぎ)川に設けられています。
 小名木川は、荒川に注ぎ込む旧中川と隅田川を結ぶ江戸時代に開削された運河でしたが、昭和に入り地盤沈下の影響から江東三角地帯の東半分は海抜0メートル以下になって

しまい、東側を流れる川の水位を干潮時よりもさらに1メートル低い海抜-1メートルにする必要が生じたのです。
 このため、小名木川はその東西で水位の違う運河に改修されました。水位は海抜-1メートルに調整され、荒川に注ぎ込んでいた旧中川は荒川ロックゲートで締め切られ、潮の干満の影響を受けないようになりました。
 西側は隅田川にそのまま繋がっているため、干潮時は海抜0メートル、満潮時には2メートルの水位があります。
 小名木川はその東西で、最大3メートルの水位差を持つ川になったのです。

 水害の問題は解決されましたが、このままでは小名木川を使った水上交通が出来ません。
 そこで、閘門の出番になります。
 具体的に水位の低いサイド(東側)から高いサイド(西側)へ船舶が移動する時は、以下のような手順を取ります。

 《前提》
  閘門内の水位は低いサイドに合わせられ、低いサイド側の水門は開放され、高いサイドは閉じられている。
   1.低いサイドより、船舶が閘門内へ進入します。
   2.低いサイドの水門が閉じます。
   3.閘門内に注水され、閘門内部の水位が高いサイドに合わせられます。
   4.高いサイドの水門が開きます。
   5.船舶はそのまま、高いサイドへ航行していきます。

 ……文章で書くと何だかイマイチですね。
 公式サイトのへのリンクを貼っておきますので、こちらのGIFアニメをご覧ください。
 http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/chisui/jigyou/suimon/sisetu/ougibashi_drive.html
 高いサイドから低いサイドへ移動するときは、これとは逆の手順を取る事になります。


【扇橋閘門への道のり】
◆最寄り駅:都営新宿線 住吉、もしくは菊川駅
住吉駅から徒歩8分(菊川駅からは同〜15分程度?)
◆事前申請:外側を見るだけなら、不要
◆見学料金:外側を見るだけなら、無料

 地下深い住吉駅から地上に出て、印刷したGoogleマップを頼りに複雑でもない道を歩けば、到着です。

 閘門の東側・西側にある橋からと、北側にある扇橋親水公園などから外側を見学する事ができます。
 扇橋親水公園の脇からは管理所に繋がる門がありましたが、閉じられていて入ることは出来ません。
 ただ、門の内側には閘門の役割を分かりやすく記した看板があり、事前申請などをすれば見学できるかも知れません。
 また、閘門が稼動しているのは、平日日中帯だそうで……土日に見に行っても、本当に水門があるだけです(汗)。


【印象】
 う〜ん、『閉鎖中』『本日終了』と漢字を浮かび上がらせる電光掲示板がなんだかエヴァンゲリオンちっくでマニア心をくすぐられます(苦笑)。


 脇にある看板を見ると、長さ90メートル、幅8メートル以下のフネなら通行できるとの事です。
 人の目からすると大きな施設ですが、キャットウォークの高さから、相当な高さ制限があるようで、公式ホームページを見てもマストやブリッジもない荷物を満載したフネをタグボートが曳航している様子から、本当に河川や港湾の荷役が用途のようです。


【妄想】
 ただ、それでは面白くないので、高さや深さを度外視して太平洋戦争〜現代までの日本の水上戦闘艦が交通できるかチェックしてみました。
 まあ、完全にデータのお遊びです。

ミサイル艇
 1号型……サイズが21.8×7.0メートル。水中翼のサイズが公表されていませんが、船体のサイズだけなら問題なく通行できます。
 はやぶさ型……50.1×8.4メートル。長さは問題ありませんが、船体が幅広なため、通行できません。

魚雷艇
 1号型〜9号型までは通行できます。
 ただ、魚雷艇として完成の域にあった10号型(32.0×8.5)、11号型(35.0×9.2)は通れません……。

駆潜艇
 もっとも幅のある『はやぶさ』型でも7.8メートルであり、長い船体を持つうみたか型、みずとり型でも60メートルで通行できます。

◆掃海艇
 旧海軍では、13号型、7号型、19号型など主だった艇は通行できますが、最も初期に建造された1号型は船体が太く(8.03メートル)、通行できません。
 海上自衛隊の艇では、初期の昭和28年計画のあただ型(37.5×6.8メートル)、やしろ型(37.5×7.75メートル)以降の艇になると、幅がネックになり、通行できません。

◆敷設艇
 旧海軍の最終型である神島型が74.5×7.85メートル。海上自衛隊保有したえりも型は65.55×7.9メートルでいずれも通行できます。

海防艦、DE型護衛艦
 海防艦は、一番長い甲型でも78.77メートルで長さはクリアしてますが、一番細い丙型で幅も8,4メートルあり、通行できません。
 DE型護衛艦は、建造計画当初海防艦と呼ばれていたため、このカテゴリに入れましたが、通行できるタイプはありませんでした。

水雷艇
 千鳥型(82×7.4メートル)は通行できます。
 続く鴻型は幅が8.18メートルのため、通行できません。

駆逐艦、PF型警備艦、DD型護衛艦
 二等駆逐艦の樅型(83.82×7.93メートル)がかろうじて入りますが、続く若竹型では幅(8.08メートル)がネックになり、通行できません。
 一等駆逐艦特型以降の駆逐艦も通行できません。
 PFやDD型護衛艦も無理です。

 先に述べた通り、この閘門の高さではブリッジやマストの高さはクリアできないため、もっと高さのある閘門か、船体だけ進水させた建造途中の艦艇を想像して楽しむ事になりますが、こうした益体もない脳内ジオラマを展開するのも楽しいものです。
 駆潜艇より小さな魚雷艇ミサイル艇のほうが幅があったりと各艦種ごとの特色が船体のサイズにも現れて面白いです。
 ただ、通れる艦種が意外に少ない! ズゴックやアクアGMなら4機くらい並んで通れそうなものですが……(汗)。

 まあ、こんな妄想もでき、見て楽しい閘門の見学はしばらく続けそうです。
 取り敢えず、次は荒川ロックゲートと、佐原の横利根閘門辺りを観光かな……。