天ヶ城公園訪問

senri_gusuku2011-09-23

【1.はじめに】
 もともと歴史ファンだし、オトコノコの常として城とか武具に興味があったワタクシ。
 ただ、ここ数年は藤沢周平の作品を愛好するようになってくると面白いことに趣味の範囲が変わってくるんですな。
 有名な大名の城だとか、合戦で有名だった名所旧跡だとかとは無関係にとりあえず城だったら何でもみてみたいし、城下町の面影が残っていればかつての石高に応じた町並みや、藩として特産品とかが気になるようになって来たりもしました。
 そんなわけで、宮崎市内にある小さい城、天ヶ城に行ってきました。


【2.歴史】
 天ヶ城は、慶長5年(1600年)、島津氏第17代島津義弘(1535〜1619)が久津良名を城地に取り立てて命名した山城です。
 義弘は高岡、綾、穆佐(むかさ)、倉岡の関外四外城の防備のために、天ヶ城の周辺には武士を集め、「高岡麓(ふもと)」と呼ばれる武家の町を作り上げました。
 天ヶ城の南西に進むと、去川の関所があり、その先は薩摩に通じています。天ヶ城および高岡麓は、国境警備の拠点としての役割を担っていたのです。
 肝心の天ヶ城自体は、その後元名元年(1615年)、大阪の陣後に出された一国一城令により廃城となりましたが、高岡麓や去川の関所は残り続けました。そのため、高岡町は今でも往事の面影を残す屋敷や門が残り続けているのです。


【3.アクセス、入場料】
バス停『宮崎駅西?』もしくは『デパート前』(宮崎駅から徒歩10分)5番乗り場から高岡・小林・穆佐(むかさ)方面行きバスで高岡小入口下車(1時間)、その後徒歩15分
入場料:無料


【4.外観について】
 あまり大規模な天守ではないし、架空のデザインだというので期待していなかったのですが、見てみるとなかなか、気に入りました。

 石垣越しに正面から見た姿はなかなかどっしりしています。

 破風の透かし彫りも立体的ですね。

 シャチホコもついています。

 ちなみに、建物自体は架空のデザインなのですが、この天ヶ城天守があったことは間違いがなく、再建天守の脇のパターゴルフ場の下に遺構が残されているようです。

 コンパクトながらもなかなかのたたずまいを見せる天ヶ城ですが、子細に見ると、架空の城らしさがそこかしこに見られます。
 正面の大手門(?)をくぐり、石段を登ってすぐのショットですが、ごらんの通り、城壁はかなり低く、成人男子の胸くらいの高さしかありません。

 また、歴史ファンなら分かると思いますが、軍事施設としての城にあるべき挟間がありません。
 ただ、おかげで天守が相対的に大きく見える視覚効果があります。
 学術的に正しいかどうかはさておき、完全に架空のお城と割り切れば、こうしたアプローチもありかもしれませんね。
 城の瓦の紋所も、宮崎市に合併される前の高岡町の町章らしいし、町おこしとしての側面が強いようです。

 入り口にある石碑の『志魂』が当時の町長の苗字から頭文字を持って来ている辺りが、ご当地色がよく出ていますね。



【5.展示】
 展示自体は、郷土史の展示としての色彩が濃く、大淀川を使った下流地域との交易で栄え、またその水害と戦ってきた高岡地区の歴史が感じられる物になっています。

 印象的だったのは、1階の川舟に関する展示です。
 行きは川の流れを使って物資を輸送し、帰りは季節風を巧みに利用して、川の流れを遡ったという先人の知恵は、動力機関や陸上交通しか知らない現代人には新鮮に思えました。
 また、4階からの眺望も見事でした。


【6.総評】
 武家門なども撮影しましたが、それはまた別の機会に。
 思っていたより満足のいく旅でした。
 バス停から山をひたすら登るのはなかなか疲れましたが、いい運動にはなったし、山城としての堅固さ(山城は、堀や石垣がない反面山の高さや険しさが防御機構として機能しているわけです)を体感できたので問題なしです。
 まあ、ほんの少し空堀が掘られて、花壇になっているのはご愛嬌という事で……。

【7.雑記】
 しかし、とにかくアクセスがし辛い!
 出ているバスは1時間に1〜2本程度なので、マイカーで観光しないとかなり面倒くさいことになります。
 私は帰りのバスを1時間半くらい待ちました。。。

 バスの路線には高木兼寛生誕の地、高岡温泉安らぎの里、関所跡や天然記念物の大イチョウがある去川などもあります。旅行先としては魅力的です。
 また、路線中にあった大塚や高岡の町並みはそこそこ栄えています。
 宮崎駅からモノレールやLRTでも引いてくれればさぞや便利になると思うのですが、採算がとれるかが壁になっているのでしょうねえ。

 せめてフルサイズのバスではなく、自治体の運行しているような中小のバスにすれば燃費も減り、本数も増やせるような気もするのですが。
 宮崎は、東京などに比べて夜空には星も多く見えて空気も綺麗なですが、道路沿いを歩いていると排気ガスの匂いでむせ返ることがあります。
 公共交通の整備はもう少し進んでもいいのではないかと思いました。