軽自動車優遇は国力維持のために必須

スズキ鈴木会長、軽増税案「今まで安かったという理由が本当に成り立つのか」
【1.はじめに】
 スズキの社長のコンスタントに軽自動車を擁護する発言には頼もしさを感じるが、反面、発言の全部が報道されるわけでもないし、端的な言葉が多く、どうも説得力に欠けるようなきらいがある。
 自社の経営にシャカリキにならざるを得ない姿は嫌いではないけれど、ちと援護射撃をかねて日記を書きたい。
 ネット上には200万を超える軽もあるから軽自動車が贅沢品だとか、自動車自体が生活上いらないとと言う意見も散見されるので、そちらをメインに書いてみたぞ。
 一部今までの繰り返しもあるので、飽きたと思う方は読まなくても結構ですだ。


【2.軽自動車の値段】
 一つ一つ反論していけば、軽自動車の安い規格のセダン型(ミラ・イース、アルト)などではきちんと100万円を下回る価格が設定されている車種は存在する。

 それ以上の背高ワゴン(ムーヴ、ワゴンR)クラスになると100万を超えだして、安価なリッターカーの最低ランク(マーチ、ミラージュ)より価格を超えだすが、そこにだって理由はある。
 軽自動車は日本独自の規格のため、基本的に工場は日本国内にある。
 日産のマーチや三菱のミラージュは人件費の安いタイで製造したものだ。だが、日産と三菱の合弁会社であるNMKVの製造するDAYZ、ekワゴン岡山県三菱自動車の水島工場で生産されている。
 日本の技術と雇用を守るためにやや価格が高い物だと考えられないか。
 無論、このクラスの内装や装備を最上級にしたグレードや、さらにその上位のターボ(ラパンやN-ONE、N-WGNだと最上級でなくてもターボはあるけど便宜上こう記載する)では150万円くらいするので、同じ会社が出しているリッターカーよりは完全に足が出てしまう。
 だが、考えて欲しいのはリッターカーだって上級グレードにすれば同じかそれ以上の値段にはなるのだ。
 例えば、マーチだと最低価格が104万円程度だが、最上級グレードは177万もする。
 乗れる人数はリッターカーで5人に対し、軽自動車は最大4人なのはどの車種でも変わらないし、車体の長さ・幅もエンジンの排気量も基本的にどの車種でも同じで、それは総じてリッターカーより少ない。
 軽自動車が一段ダウングレードしてあるのは間違いないから、相対的に軽がぜいたく品とは言えない。


【3.そもそも自動車は贅沢品か】
 都内など都会で暮らしていると、電車が来るのに7〜8分待たされるだけで長いと感じてしまう。一本の間隔が15分を越えるようならばもう田舎だ。
 そんな風な風土に育ってくると、自動車のメリットというのはなかなか分からない。

 だが、地方ともなると話が別で、単線の列車は1時間に一本くればいい方だ。都内ほど鉄道網も整備されていないし、最寄りのバス停が30分に一本だったりもする。
 こうした世界では自動車、わけても税制が安い軽自動車は生活に必要な物だ。
 カーシェアリング? 有効な手段かと思いきや、都内ほど人口が密集していないから、シェアする自動車をどこに置けばいいのやら。
 レンタカーを借用できる駅までが第一行き辛い。

 今回の自動車取得税の無償化と軽自動車の維持費の増大はおそらくアメとムチという側面を役人は持たせたいのだろう。
 買い替え需要を呼び起こしたいのだろうけれど、地方の疲弊だって相当なものだ。
 町中には初代や二台目のワゴンR(15〜20年落ち)、2代目ムーヴ(15年落ち)といったスタンダードな旧い車種から、ミラ・ジーノ(4〜15年落ち)、ネイキッド(9〜14年落ち)、スピアーノ(マツダがラパンをOEMした車種。ウサギマークがないため不人気。5〜11年落ち)、2代目から4代目のライフ(ホンダの軽はNシリーズ以前はほぼ不人気。5〜16年落ち)など、旧い車種や栄えている都市などでは見かけない珍しい不人気車種がごろごろと現役で走っている。
 都道府県別の最低時給ランクを見てみれば格差は明確で、東京都は869円が最低に対し、最低ランクの県は664円。
http://www.japan-now.com/article/374443542.html
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 県民総生産だって、東京は91139(平成22年度、単位は10億円)に対し、最低の高知県は2158と40倍以上の開きがある。
 無理に自動車を持たなくていい首都圏や都会の暮らしに比べると、地方は無理してでも自動車が必要だ。
 それは、公共事業で道路を作る代わりに鉄道や公共交通を作ったり維持するように日本の政治体質を変えられれば話は別なのだろうけれど、それこそ、軽自動車の増税をストップさせるよりも大変な事ではないか。


【4.日本政府は長期的なヴィジョンを示せ】
 増税国債の返済や疲弊する地方の救済のために必要である。
 ここ1-2年特に声高に叫ばれるこの声はうなづけるところは多いのだが、疑問は残り続ける。
 いつまで、国債に対してパッチワーク的に増税を続けるのか?
 増税の果てに何があるのか?
 なんでもいいからヴィジョンを示して欲しい物だ。
 増税はするが、今年から少子化対策をきちんとやるから、25年後には年金の心配をしなくていい社会を作りますだとか。
 軽自動車を増税するが、軽自動車を基にした自動車を新興国に輸出できるように国としてもきちんとバックアップしていきますとか。
 それが政治としての増税をしたツケを払う責任の取り方と言う物だ。
 安倍内閣になってから国の威勢は良くなったが、そこまでグローバルで長期的なヴィジョンがあるのか。
 日本の『この先』が見えてこない事が大層心配である。