鹿屋から都城か

朝日新聞デジタル:鹿児島の小学校教頭、偽札使った疑い 宮崎県警が逮捕 - 社会 朝日新聞デジタル:鹿児島の小学校教頭、偽札使った疑い 宮崎県警が逮捕 - 社会

 模範となる先生がなぜ、とかそうした通り一辺倒の反応ができそうな記事だけど、なんだか色々悲哀が漂ってくる記事なので、思わず日記に書きたくなってしまった。

 鹿屋から都城へ行ったという事は、大隅線も志布志線も廃線になった現代、自ら車を運転して来たに違いない。
 距離としてはそんなに遠くない。かっ飛ばせば1時間くらいの距離だ。
 鹿屋も大隅半島としては大きな町だが、地元では知人もいるだろうからわざわざ宮崎の都城まで来たのだろう。
 そして30年近い安定した生活にピリオドを打つような事をしてしまったわけだな。
 犯行のスケールの小ささからすると、偽札はたぶん、コンシューマ用のスキャナやプリンタで打ち出した粗末な品だったに違いない。照明を落としたラブホテルの中では欺けても、普通の照明の下ではすぐばれる。

 こうした事をわざわざ言いたくなるのは、南九州・東九州の貧しさが背後に浮かび上がってくるからだ。
 2万円くらい自分で何とかしろと言われもするのはやむを得まい。だが、九州の東南部は貧しい。
 九州新幹線の開通で鹿児島の観光客が増えている一方で、数週間前に報道されたNHKのニュースでは鹿児島のホテルに就職した20代の若者の月給が12万円前後という驚きの数字が示されていた
 コンビニの時給だって驚くほど低い。東京では時給800円台が相場なのに、宮崎市内では600円台だ。

 肝付教頭は公立校の公務員だから、大体地元企業の年収を参考に給与が決定されるはずだ。
 身分が安定している公務員といえども、そうそう多くの額を望むべくもない。
 だからと言って、犯罪が許されるわけではないが、閉塞感を感じたり、貧しさからこそ犯罪は起きたのではないか、とも推察される。

 ただ、ここで悲しくなるのは、彼が肝付という名字だという事だ。
 肝付氏というと、南北朝時代南朝方の武将として勇名を馳せたり、戦国時代の一時期は島津氏を圧倒するほどの氏族だった。
 都城市といえば、その月山日和城があった場所である。

 実際に血縁があるのかはわからないが、ご先祖様粉骨の地で晩節を汚してしまったのは何とも嘆かわしいではないか。

 苦しみへの支えの一つとしては、まぎれもなくプライドというものが存在する。
 教頭氏がせめて、自分の存在が現在だけでなく、過去や未来にも通じている事を意識する事ができれば、踏みとどまれたのではないか。