グロッシーグラスコート悲喜こもごも

senri_gusuku2014-05-10



【1.初めてのお買いもの】
初めての自動車の購入に当たってはイロイロ悩まされた。
操作性の良さと維持費を考えると軽自動車が第一候補なのだが、そのままの動力性能は絶望的なのは試乗で良く知っていた。
ターボ搭載が理想的だが、そうすると値段はコンパクトカーを上回り、燃費でも負けてしまう。

ただ、実家のコンパクトカーと試乗した軽ターボの操作性を比べた時、明らかに後者に軍配が上がったのは事実。
軽ターボの充実した装備品をコンパクトカーに装備させたときは価格差が大分埋まり、数年単位での税金や保険料を考えた時、差額もそう大したことはない事が分かった。
燃費だってカタログスペックの6〜7割と考えれば圧倒的な差かどうかは分からない。
操作性の差はすなわち安全性の差につながる。
よく正面衝突した時の軽自動車の安全性が――と言われるが、運転しにくい自動車というのは疲労や回避性の意味では問題だ。当たらなければどうという事はない! という名言もある。
まあ、アニメロボだと装甲を省いてスピード重視にしたマシンが人気だったり、格闘マンガだと体格に優れた親父や兄がラスボスでチビな息子や弟が主人公なのは世の常なのに、自動車の世界では皆様欲求に素直なのはオタクとDQNの違いという奴なのだろうか。

ともあれ、俺は自動車への憧れをもたらしてくれたホンダのN-ONE Tourerに車種を絞った。後は、オプションへの物欲で何を取り、捨てるかになる。
車体の色はツートンが良かったが、納車に3-4か月はかかる上、最上級のプレミアムモデルでないと欲しい色がないから単色となる。
ただ、いささか値は張るが、フロントマスクが映える色にしたい。特別色のプレミアムホワイトパールに絞った。
折角の新車だし、デザインも気に入ったので、コーティングも必要だろう。


【2.コーティングは強さの証!?】
さて、コーティングというと、ガンダムGP02が至近距離の核爆発に耐え抜いたり、ガンダムSEEDの世界では強力な攻撃手段のビーム兵器を防いだり、あとは表面のコーティングではないけれど、G3ガンダムに施されたマグネットコーティングは反応速度を飛躍的に向上させたりと結構大事なもの。

ホンダの新車向けコーティングはブライトポリマーとウルトラグラスコーティング、ウルトラグラスコーティングNEOの3種類という。
http://www.honda.co.jp/ACCESS/care/bodycoat/
一度はディーラーさんの、どのコーティングでもメンテナンスは必要という言葉に背中を押され、一番安いブライトポリマー(軽の施工費は3万円程度)に決めた。
けれども、契約から納車までの期間で見る見るうちに不安になっていた。

俺が行きたい鹿児島や都城は、桜島や霧島と日本有数の活火山がそびえ立ち、時にはもうもうと元気に火山灰を吹き上げる。
鹿児島市内で見かける自動車は、桜島が大人しい日でも数日前の降灰を残したまま走っているが、こいつが曲者なのだ。
ガラス質で硬い粒子である火山灰は木材に付くと表面を傷つけ、商品としての価値を著しく下げるという。
自動車のグラスコーティングは火山灰対策ではないが、頑丈であることに越したことはない。

ブライトポリマーの強度・耐久性はレーダーチャートで見る限り最弱。
メンテナンスも低い数値を示しており、ずぼら俺には合わないのではないか。
いくら保証があるとはいえ、免責事項があるはずだ。保守を受けられても、それは補修であって新品にする魔法ではない。
その事は今の仕事で思い知らされている。いや、正確にはお客様に思い知っていただいているというべきか。大変申し訳ございません。

俺は、見た目は劣るが、強度とメンテナンスは最強クラスであるウルトラグラスコーティングにする事にした。
ところが、である。

はじめ、見積書に書かれていたグロッシーは表記こそ違うがウルトラグラスコーティングという説明だったが、何度か聞くと訂正があった。やはり別物で、ホンダ南九州ではウルトラグラスコーティングの代わりにグロッシーを販売しているというのだ。
ウルトラグラスコーティングやNEOはポリシラザンによるガラス質の被膜だが、グロッシーはシランでガラス質の膜を作った上でレジン被膜を施し、最後にフッ素で仕上げるのだという。
ディーラーさんに聞いてみても、ウルトラグラスコーティングとほぼ同じというだけでどうも疑問は残った。
調べてみるとシランはスマホのガラス面に貼るカバーとして市場に流通し、釘でこすっても傷がつかない強度があるらしい。
安いからある程度劣るかもしれないが、ブライトポリマーよりは頑丈だろう。あるいは、引けを取らない強度はあるが、表面の仕上げが滑らかでないから、表面のレジン被膜が必要なのかもしれない。
問題はそのレジンだ。要はガレージキットで使われているプラキャストの親戚だが、切削性はひじょうに良く、強度面では心配が残る。

この辺りの疑問は、ディーラーさんでも明確な回答は得られなかった。俺だってこんなめんどくさい客に当たったら困る。
困るのだが――、金を払うというのはそういう事だ。
唸りはしたが、5年保証の中で途中の再施工も含まれているし、買った車にはカバーを付けるつもりでいたから、本当はブライトポリマーでも十分なはずだ。
4万円という施工費はウルトラグラスコーティングNEOの6万円よりは安い。
ローンの利息を払わずに一括で買うと決めていた俺としては、2万円の差は大きく、結果としてグロッシーを選択した。


【3.届いてしばらく】
届いてみると、やはり新車の満足感は違い、雨の日に水がベタッと流れるのではなく、表面に水玉を作って滑っていくさまは見ていて爽快!

しかし、3、4か月もたつと妙な事に気付いた。
表面に黒ずんだ汚れが目立ち、自動車の四隅にはこすってもいないのに傷が目立つ。

さすがに気になって半年点検で聞いてみると、意外な事が判明した。
カバーの縫い目との摩擦、そしてカバー内部に残った湿気が外に出られずに車体を蒸すことで、コーティングを痛めているのだという。
そんな馬鹿な……!
とりあえずメンテナンスクリーナーを使うと黒ずみやひび割れは解決すると言うので、試してみた。
結果は意外そのもの。

まあ、100%消える事はないけど、かなり表面の斑点や黒ずみは抑えられ、全体的に艶が出て状態はよくなった。
四隅の擦った痕は消えなかったけど、感触は滑らかになった。

まめに洗車すればいい状態を保てそうでほっとはしたが、冬場の洗車は絶対に楽しくない。
とりあえず、次に車を買う時はウルトラグラスコーティングNEOにしようと思う俺だった。
あ、一応今の状態で保証としてなにか補修とかしてくれるのかディーラーさんに聞かなくちゃな……。