荒瀬ダム、撤去中!

senri_gusuku2014-07-27

【1.九州の公共事業】
 公共事業というと、九州はどうも『失敗』のイメージが強く付きまといます。
 思い出したように話題になる長崎県諫早湾干拓工事もそうですが、宮崎県でも戦前大淀川に轟ダムを作ったのは良いものの、ダムのせいで洪水が頻発し、集落がまるまる一つ移転に追い込まれ、ダムもまた戦後移転した事がありました。


 宮崎県のダムでのもう一つの失敗というと、杉安峡に作られた杉安ダムも忘れてはならないでしょう。
 宮崎市佐土原駅から古墳群で知られる西都市まではかつて妻線と呼ばれる鉄道が敷かれ、終着駅の杉安にある景勝の渓谷を観に多くの人々が訪れ、日向の嵐山と呼ばれる賑わいを誇っていました。しかし、杉安ダムができると渓谷も水没し、観光客の減少から妻線はついには廃線になったと言われています。熊本県を通るくま川鉄道湯前駅から妻線への路線も計画されていたらしいので、なかなか勿体ない話しではあります。
 もちろん、杉安ダムを巡るこうしたエピソードはある程度ノスタルジーは混じっているでしょう。妻線は西都からの材木の輸送も担っていましたので、昭和40年代以降の木材離れとモータリゼーションの流れや、鉄道も廃線になってさびれた高千穂の町を思うと、ダムがなくてもさびれた可能性は十分に思い当たるものです。

 さて、そんな思いが渦巻く九州の公共事業ですが、最近面白い話しを聞きました。
 熊本県八代市にある荒瀬ダムが撤去工事中だというのです。
 おりしもNHKの『新日本風土記』でその風景を見た俺は、南九州にいるならばぜひその現場を見たいと思い、N-ONEにまた一働きしてもらう事にしました。


【2.取り戻せ、エコドライブ!】
 さて、前回のエコドライブ日記のあと、ガソリンを満タンにした俺は、伸び悩む燃費計に頭を抱えていました。
 友人の空港へのお迎えや、遊びのためにエアコンを全開にして町乗りやアイドリングをしていたら、燃費計はなんとリッター12.4キロ! こんな成績のままでは恥ずかしくてe-燃費サイトへ投稿できません。
 誰かに気持ちよく乗ってもらってもいいスコアを出すのが真のエコドライバーですが、実際問題この数値のままではかなり気まずいものです。
 どれだけ取り返せるのかを裏テーマに、今回の旅行に挑みました。


【3.見たぞ、荒瀬ダム!】
 そんなわけで、車載温度計が38度の酷暑を示す中、エアコンはぎりぎり冷房が動作する31度(それ以上だとオートエアコンと言えど暖房に切り替わるようで熱風を吹き出しました)でちょこちょこスイッチを切りながら霧島の麓をパスして九州脊梁山地へ突入。気温が下がって来たので車載温度計から1度マイナスした程度のエアコンをつけたり消したりしながら、しばらくぶりに八代に行きました。

 高速を降りて、球磨川沿いの道を遡っていくと、待望の荒瀬ダム撤去など、工事を歓迎している様子が見受けられました。
 大がかりな工事だと大体賛成派と反対派が交互にスローガンを掲げているような印象があるものなので、安心してダム撤去の現場を見る事が出来るという物です。

 今か今かと待ちかまえながらうねる山道を流していくと、坂本物産館を越えた辺りで唐突にダムが現れます。

 夏場はアユに配慮して工事は中断しているとの事でしたが、思ったよりもまだ全体が残っています。

 それから、意外と小さい。偏見かもしれませんが、ダムというと谷の中の村落一つまるまる水没させるような規模の物を想像していたのですが、護岸工事した河川敷を水没させる程度の規模だったようです。
 ただ、これだけでも遡上する魚にとっては大変なもので、流域の人たちは遡上するアユを捕まえては上流に放流して球磨川の生態系を守ってきたのです。

 放出される水の流れはかなり激しく、今はコンクリートの段差にすぎなくても、遊泳力の劣るウナギは多分遡上できないでしょう。今時点でもイールラダー(ウナギが越えられない段差を工事でつけてしまった場合、段差をウナギが越えられるように緩やかな角度の樋やパイプを通してウナギの遡上を助けます)の設置はしてもいいと感じられました。


 少々ピンボケしていますが、堰で水没していた川原です。今の流れよりも陸地寄りの部分はダム時代に堆積した泥や砂のせいか、石の粒が見えませんね。

 自ら作り上げ、発電に使ってきたダムを壊すのは胸に一抹の寂しさがよぎりますが、人が自らの過ちに気付き、積み重ねて来たものを敢えて壊す勇気を感じました。
 ただ、八ッ場ダムみたいな無駄なダムも相変わらず建設中なのは虚しくなります。
 国内をいくら工事して国土を『強靭化』しようとも、日本企業は人件費の安いタイに工場を作り、治水のなっていない国での洪水に苦しめられます。
 公共事業をペイできるようにするには、国内産業を空洞化させずに守っていかなければなりません。
 血税を注ぎ、自然を破壊して作ったダムはそれだけの価値を生み出しているのか、土建屋への利権だけではなく、地元や国民全体の利益や幸せをきちんと生み出せているのか広い視野に立って行政ができれば、この国はより良くなるのにと思いました。


【4.おしまいに】
 遠いと思っていた荒瀬ダムも意外とN-ONEで早く辿り着けて日帰りできたのは意外な発見でした。
 しかし、前回の八代訪問は博物館の企画展目当て、今回はダムだけ目当てなので、城下町を堪能できていないのが惜しまれます。
 今度行く時は泊まりでゆったりと楽しみたいものです。

 さて、帰り道は霧島サービスエリアを抜けた辺りの下り坂でN-ONEのN/A(ターボなし)モデルに追い抜かれたりしてエコドライブを実感しましたが、結果は表示リッター19.7キロ、実測19.04キロでした。
 e燃費だと端数の切り捨て方から19.01と表示されていますが、7月の俺の平均値がちょうどこの数値だったので、偏差値は上りも下がりもしませんでした。

 とりあえず昔に比べれば数値は良くなっているなあと思う反面、過去のとりとめなく撮った写真たちを見ると、冬場はリッター20キロ台の表示がごろごろとあるではありませんか……。
 今度の週末は宮崎県内でも秘境とのほまれ(?)も高い椎葉村までドライブする予定です。
 登り坂で燃費が落ちるか、はたまた人気のない道と涼しい山の中ゆえに燃費は上がるか。
 目当ての物も楽しみですが、行く道筋そのものが楽しみなのはなかなかの幸せであります。